第1章 その男、天使

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ふに、ふに。 柔らかなほおをつつき、小さな握りこぶしに指を差し込む。 「ふふ、小さな手」 温かな、命のぬくもり。 生まれたばかりの妹を、ユーリィは畑の手伝い以外の時間はこうして構い倒していた。 「あ、あ、燃えてしまう……っ」 炎の中に村は消え、人買いたちに子供らが荷車へと押し込まれていく。 友達も、自分もーー。 そして、それさえ全て消え失せた。 崖下を、冷たくなった死体が埋め尽くす。 その中で一人、ユーリィは呆然として立っていた。 (ここは、地獄か。) ユーリィは妹だったモノを拾い上げ、抱きしめる。 「う……くっ……」 神さま、どうか神さまーー、 * 「ユーリィ、危ないっ」
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