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エファーリムはニカッと人懐こそうな笑みを浮かべ、ユーリィの肩を叩いた。
「そうカタい挨拶はいいさ。君もいいよ、出ておいで」
「……俺がいては、ユーリィの品位を問われる」
「君は彼が大好きなんだねぇ。大丈夫、霊獣に好かれるのは本来希少で良いことだ。君たちの場合、少し事情は違うから……まあ、それで嫉妬されてるだけさ」
大天使に言われ、レキは警戒しながらも姿を現した。
ユーリィの脚元に寄り添うレキを見て、エファーリムはエメラルドグリーンの瞳を優しくそばめる。 そしてユーリィの髪を指に絡め、するりと解いた。
「みんな君たちに興味があるのさ。可愛い可愛いユーリィと、仲良くなりたい。でも、彼らもまた未熟だ。己と違うもの、得体の知れない『元人間』の天使に戸惑っている」
「別に、困ってません」
「ユーリィ」
エファーリムとレキの、たしなめるような声が重なった。
ユーリィはそれをひょうと流すかのような表情で、しかしどこか遠くを見つめるような目をする。そしてボソボソと話し出した。
「理解されないことより……理解できないことの方が怖い、ですから。僕は、彼らの仕打ちを心から受け入れてるわけではありませんが、その気持ちは理解できる気がします」
「……君は優しいね、ユーリィ」
エファーリムはユーリィの頭を胸へと引き寄せた。
「しかし、思い違いをしてはいけないよ。君はもっと、伝える努力をしなければ。理解されなくとも良いと割り切ることと、初めから相手を諦めることは、似ていて非なるものなのだから」
「……はい」
「おい、コイツ今、あんまり分かってねーのに返事したからな」
「手厳しい相棒だなぁ、君は」
レキのにらみを受けて怯むユーリィを見て、エファーリムはカラカラと笑う。
「さて、ここからが本題なんだけど」
エファーリムは顔を引き締めると、緩くウェーブした長い髪をひとまとめにした。
「風の谷に異変が起こっているらしい。あそこの洞窟は卵の発生がいくつも報告されていて、保護区域に指定されていたのだが……どうやら全滅の危機だ」
「な……っ。悪魔の侵入ですか?」
「いや、」
長いため息をつき、エファーリムは眉間にシワを刻む。
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