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「あークソ、また負けたよ」
僕は被っていた機械を外しながらぼやく。
「何? またあのゲーム?」
彼は分かりきったことを聞いてきた。
「今回はドイツも味方につけたし、いけると思ったんだけどな~」
言い訳をするように僕は言う。
「ていってもドイツだって資源とかそんなに無いんだし、持久戦になったらおしまいだろ? なかなか終わんないから俺はてっきりアメリカかと思ってたよ」
「アメリカになってたら1時間もかかんないってば、余程のミスをしなければ2年で片付けられるし、あっちはもうタイムアタック状態だって」
第二次世界大戦を再現したこのゲームを始めてもう結構経つが僕は日本が勝つパターンにまだなったことがなかった。アメリカ陣営になったときはつまらないほど一瞬で勝てるというのに……。
「でも今回は逆の意味でのタイムアタックは上手くいったみたいじゃん」
彼は茶化すようにそう言った。よく日本でそこまで戦えたな、と言いたいのだろう。
「まあタイムで言えばランキングで一桁に入るぐらいは粘れたけどさすがに厳しいね、だいたい日本陣営で勝ったのがまだ数人しかいないんだよ? 無理ゲーだわ」
僕の苦労もよそに彼は何の気なしに言う。
「ふーん、ドイツを味方にするぐらいなら俺にもできそうだけどな」
これだからゲームをしないやつは……僕は彼に呆れた口調で言い返す。
「お前な、ドイツを味方につけるだけだったら日本は2年も持たないわ。零戦をつくったり酸素魚雷をつくったり大変なんだぞ。それに今回は宣戦布告の前に真珠湾を奇襲させてみたりと、もう手が3つじゃ足りないぐらい複雑なんだからな」
僕の力説も虚しく、彼は言う。
「へぇ~奇襲か、いいアイデアだね。でも兵士とか民間人とか全部AIだし不確定要素も多いんじゃない?」
変わったところに目を着けたな。
「そうなんだよ、日本のAIども暗号を解読されたらしくて真珠湾奇襲の時は空母を逃したし、ミッドウェー海戦では返り討ちにあう始末だよ」
「なら、ドイツのエニグマ暗号機を使わせてもらえばよかったのに」
そんなのできないに決まってる。説明するのが面倒だがまぁゲームにあまり関心の無い彼が珍しく聞いてきてるので簡単に答えとこう。
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