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「ゴメン。やっぱりまだ向こうには行きたくないや。もう少しだけ、ここにいたい。確かに俺には恨む人も、この世界への執着も、守りたい誰かも、そばにいたい誰かもいない。でも、やっぱりもうすこしこの世界に留まりたいんだ。いつまでもこの世界にいるつもりはないけど、もう少し。もう少しだけ、この世界で自由にさせてくれないかな?」
ダメだろうな。
ダメに決まってる。
そう思いながらも、俺はすがるような目で見た。
なんだかバツが悪そうな顔で天使が俺を見ている。
「やめてよね、そういう目で見るの。そういう目されるのが一番弱いのよ。分かったわよ。ホントはあんまり安易に許しちゃいけないんだけど、あんただったら悪さはしなそうだし、特別に認めてあげる。それと、あんたみたいに天使の許可を得た場合は、他の霊と違って物質に直接干渉できるようになるわ。そういうのも悪用しないように気をつけてよね」
意外にも、天使は俺の願いを聞き入れてくれた。
神様……じゃない。天使様ありがとう。
「で、どうしたらいいの?」
「どうしたらって、好きにしたらいいじゃない」
「いや、特に契約交わしたりとかしなくていいのかなー?って……」
俺が聞くと天使はどこからかメモを取り出し、何かを書き込むと、ビッと破って俺に押し付ける。
「電話番号?」
「あたしの連絡先。直通でかかるわ」
「Q2ダイヤルなんですけど?」
「三分百円でお相手してあげるわ」
……どこまで本気でどこまで冗談なんだろう?
あきれ返る俺をよそに、天使はどこか自信満々な態度だ。
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