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小学生の頃北海道に住んでいた。札幌市の外れですぐ後ろには原始林と呼ばれる広大な森が広がっていた。
住まいはトタンの三角屋根に煙突がついている二階建ての一軒家だった。その当時の新興住宅街では平均的な作りで、町中青や緑や赤の三角屋根が何丁にも渡ってずらりと並んでいたものだ。綺麗といえば綺麗だが何の特徴もない集団と言ってしまえばそれまでだ。
私の部屋は二階、12畳ほどの広さの部屋を真ん中でアコーディオンカーテンで仕切り、兄と2人で使っていた。南向きの一つ窓がアコーディオンカーテンで真ん中から2つに分けられるようなレイアウトだ。
スチールの勉強机、丁度机に収納出来る大きさの、座面と背もたれが回転するいす、そして本棚、ベッドが置かれ、兄の使う部分と私の使う部分に一つづつ置かれていた。
──森の空気は気持ちがいい。
朝起きて窓を開けると、夏だというのにひんやりとした空気を部屋に運んでくれる。
家はちょっとした高台にあったので森の全体を見渡せた。
どこまでも続く雄大な木々の重なりはところどころ霞がかかり、どこからともなく野生のハトの鳴き声が響いてくるし、時折小さな黄色い生き物、そうキタキツネの姿を見る事も出来た。
遮るものの無い真っ青な空、森の緑、霞の白、キタキツネの黄色、それに無限に降り注ぐ太陽の光、そこに響く野生のバックミュージック、見事なコンテストの大パノラマをいつも見ていた。
──豊かな森はその大いなる懐で多くの生き物を育む。
小学生の私はその事をひしひしと感じていた、いや、感じざるをえなかった……
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