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それは突然始まった。
夜、ベッドで寝ているとキーンという音が鳴り響き目を覚ました。
何時だろう、まだまだ部屋の中は真っ暗だし、カーテンからも一切光を感じない、深夜である事は間違いない。アコーディオンカーテンの向こうからは兄のいびきが聞こえている。
キーンという耳鳴りの奥に確かに聞こえる。
グーグー……
いやまてよ──
音はそれだけじゃない、
キーン…グーグー…
キコキコキコ…
キーン…グーグー…
キコキコキコ…
キコキコって?
全身から汗が噴き出す、訳の分からない恐怖に包まれる。
キコキコキコ…
音は鳴り止まない、切れることなくずっと続いて──いる。
私は音を立てないようにゆっくりゆっくり上半身を起こすと、部屋を見回し凍りついた。
勉強机にしまい込んだはずのいすが部屋の真ん中に置かれ…背もたれが…
ま・わ・っ・て・い・た
キコキコキコ…キコキコキコ…
それは朝まで続いた。
豊かな森はその大いなる懐で多くの生き物を育む、見えるものも見えないものも──見えないものは、時折、部屋に忍び込みその存在を教えてくれた。
今も忘れない嘘のような本当の・お・は・な・し──
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