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眼鏡をずらして、伸びた前髪をぐしゃりと握る。
頬に伝う涙を拭った、様々な感情が綯い交ぜになって苦しい。会いたい、でも会ってしまったらまた互いに追い詰めてしまうかもしれない。恋しい、寂しい、この気持ちを埋める事は誰も出来なかった。彼以外、一路以外唯一の人などいないのだ。
どうしたい…
決まってる…
貴方に会いたい。
とめどなく流れる涙を止めようと、メモをに握る手に力を込めて嗚咽を堪えてみたけれど上手くいかない。柔らかな感触に気が付いて、手元を見た。待っていると書かれたメモの後ろ、一番最後にはあの喫茶店の名前が刻印された紙ナプキンが挟まっている。
『毎週土曜日午前11時いつもの喫茶店で、今日も君を待つ 一路』
このメモには日付が書いてあった。それを見た夏樹は息を飲む。
「今日の……日付?」
まさかと思考を巡らせた。
(まさか、このメモをここへ持ってきたのは…)
部屋を見渡しても壁掛け時計はなく、ポケットにしまったスマホを取り出して時間を確認する。そして居ても立っても居られず、部屋を飛び出した。
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