番外編

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1 〔君の話しをしよう〕side一路 とあるパーティーに参加した時の事、たまたま出会った倉敷というエージェントに何となく仕事の話をすると、彼は気の良い笑顔を見せてWEBデザイナーを紹介してやると言った。 企画が立ち上がっているものの、新人の育成にも気を回さなければいけなかった手前、少しでも仕事が楽になるならば外部に委託するのも手かと依頼するに至った。 倉敷が言うに、余り人と関わる事が得意ではないらしいWEBデザイナー高橋夏樹の姿を初めて見たのは、いくつかの企画を経て彼と仕事を重ねたこの年の年末に開かれた忘年会の席でだった。顔を出しに寄っただけと言う倉敷の背後には、マフラーを鼻の下までぐるぐる巻きにした男性がいた。倉敷に前に押し出されると、彼はぺこりと頭を下げて自己紹介したのだ。 同僚達は男も女もなく、皆色んな意味で色めきだった。 様々な人に声をかけられ、戸惑った様に眉を下げて相槌を打つ彼が、徐に流した視線が奥に座る俺の姿を捉えると、今度は形の良い口が動く。 その唇は音もなく石川さんと呟いたのだ、俺はまるでそれに応える様に高橋夏樹と呟いた。 その日は結局終始お偉方に捕まって、彼と話すことさえ叶わなかった。
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