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3.森の触手にご用心
俺がこの森に落ちて来たのはどうやら朝の時間帯だったらしく、木々の隙間から空を見ると真上に太陽が鎮座していた。
何も持っていない状態でこの場所に来たから正確な時間は解らないが、この世界も俺の世界と同じような時間の進み方をしているらしい。
ゲームとかだったら数分で一日が終わるもんだけど、どうやらここはゲームの世界というのでもないようだ。ちぇっ、ゲームの世界だったら俺もチートで無双できたかもしれないのに。
まあ仮にゲームの世界だったとしても、ステータス画面すら見られない俺には何もできませんけどね!
ちくしょう悲しくなってきた!
涙を拭いつつ、それでも俺は歩いた。
巨大な木の根に足を取られて何度も躓きそうになっても、必死に歩き続けた。
だけど、一向に森の出口は見えない。一応途中で木に登ってみたけれど、枝が絡まって木の上には行くことが出来なかった。つまり、見晴らしのいい所から遠方を見るのもムリなのだ。
方角だって解らないし、正直完全に詰んでる。
戻ろうと思ったって、毛玉の群れの場所すらもう解らない。
あの場所でじっとしていた方が良かっただろうか、と考えたが、何故かそれはやってはならないような気がして、あそこには留まれなかった。
なんていうか、野生のカンというものなのだろうか。
何一つわからない世界だけど、何故かあの場所に長居をしてはいけないという事だけは、俺にはハッキリと解っていたんだ。
今となってはその予感すら疑わしいんだけどな。
「うーん……そろそろハラも減ったし本当ヤバいぞ……こうなったら、そこらへんに生えてるツタニンジンを食べてみるしかないが……」
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