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そこには、白い液体に塗れた木の枝が転がっている。
うわっ、周囲一面真っ白け。なにこれ季節外れの大雪状態じゃん。
これってまさか、この植物の消化液なんだろうか?
「もしかしてお前……俺の刺した木の枝を引っこ抜いて、こいつを倒してくれたのか?」
よく見れば、青大将の体に僅かに白い液体が付着している。慌てて葉っぱで拭いてやると、青大将は嬉しそうに目を細めた。
「キュイ、キュイ!」
「そっかあ、俺に恩返ししてくれたんだな、ありがとな」
ううっ、やっぱり可愛い。
言葉が通じてるのかは解らないけど、こうして感情丸出しにされると爬虫類も可愛いモンなんだな……。
思わずひんやりした頭を撫でてやると、青大将は嬉しいのかニコニコして尻尾を振りまくる。
「もう触手なんかに捕まるんじゃないぞ?」
「キュィー」
それは俺にも言える事なんだけど、この際どうでもいい。
俺は助かった。そして、恩を感じるほどに知能の高い動物に出会う事が出来たのだ。これは大きな収穫だ。
蛇と心が通じ合ったのだから、もしかしたらこの世界の動物は全て人間の感情を敏感に感じ取れるのかもしれない。だったら望みはあるぞ!
ヤバそうじゃない動物を見たら話しかけるんだ。そしたら、相手は俺を憐れんで助けてくれるかも。情けないけどこの際背に腹は代えられない。
生きるためには、なんだってやらなきゃ。
俺を見上げる小さな蛇を撫でながら、俺は新たな可能性に胸を膨らませた。
「よっし……怖かったけどいつまでもビクビクしてちゃダメだよな! これくらいで怯えてたんじゃ、この世界ではやってけない……とにかく、前進あるのみだ!」
丸呑みプレイから逃れられたんだから、俺はわりと幸運なはず。
その幸運で森を脱出して、何が何でも生き延びてやる!
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