5.パートナーは森の蛇(地味)

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  「えーっとね、森じゃない、森イヤイヤ。バーッと広いところ。俺みたいなの沢山いる所、解る?」 「シュシュ? キュー?」  のびのびと体を伸ばして、青大将は必死にこちらのジェスチャーに応えようとマネをしてくる。俺が正しい行動に頷くと、相手もなんとなく理解したようで俺のズボンの裾を口で引っ張ってきた。  もしかして連れて行ってくれるのかな。  青大将の後ろ姿を追いながら暫し走って行くと、遥か向こうに明確な光が見えた。あれは……もしかしなくとも、出口!? 「やった! 伝わってたんだな、ありがとう青大将くん!!」  青大将が先に森の先に出たのを見て、俺も一気に草むらを抜ける。  踏み込んだ森の先には――――素晴らしい風景が広がっていた。 「うわあ……」  広い広い草原に、その真ん中を突っ切る長い長い道。遠くには森と険しい山が見えて、夕方の光にそれらが輝いている。  生ぬるい風が通るたびに、草原は微かな音を立てて揺れていた。  空だって、とても大きい。  遮るものは何もの無くて、ずっと遠くまで橙色が続いていて。  まるで、夢の中の風景みたいだ。 「綺麗だな……」 「キュー?」 「はは、そっか。お前には見慣れた光景だもんな」  不思議そうにしている青大将の頭を撫でると、相手はまた嬉しそうに目を細める。何はともあれ、ジェスチャー作戦は大成功だ。  この蛇君みたいに頭がいい生物になら、ジェスチャーである程度は理解して貰えそうだな。言葉が通じなかったら人間にもジェスチャーを使おう。  どこで会えるかはまだ解らないが。 「うーん、森を抜けたし、これからは道を歩いて行けばなんとかなるかな」  こんなに綺麗に整えられた道なんて、人間……少なくとも人型の知性のある存在じゃないと作れないだろう。  道の先に道標のようなものも見えるし、実は街も近いのかも。  本当、青大将君には感謝しないとな。  てかまあ、今更だけど青大将じゃないんだけどね、この蛇君。   
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