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俺は彼らの姿が良く見える所までじっとみつめて……やがて、目を見開いた。
「げっ……あれって……まさか……」
近づいて来る人々は、皆一様にバンダナをつけて袖なしのボロボロな上着を着ている。しかも、腰には短刀……とくれば、これは。
「盗賊ぅううう!?」
「おうおう、金か命かどっちか選べ!」
「テンプレ発言ありがとうございまーす!!」
思わず言っちゃったけど、相手は気にせずに俺に短剣を突き付ける。
「何を言ってるんだか解らんが、さっさと金を出せ。命が惜しくないのか?」
「い、いやちょっと待って下さい、俺金とか持ってないんですよマジで。ほら見てこの薄っぺらい体! いや違う薄っぺらい装備!」
布装備なんてこの世界じゃ最弱に決まってる。盗賊達の服装だって質素極まりないんだから、俺の装備を見てこいつは金がないと諦めてくれないだろうか。
そう思って両手を広げて無防備状態になってみたが、盗賊達の反応は俺の期待するものとは全然違う方向にいってしまった。
「薄っぺらいが、こりゃ上等の布じゃねーか」
「おい、こいつどっかの貴族とかじゃね? 家出してきたとか」
「ありえる~、すっごくありえる~」
三人目がなんか微妙に気になる。
いや、そんな事気にしてる場合じゃない。こいつら勘違いしてるぞ。
「ちょ、ちょっとまってよ。俺のどこが貴族にみえるんだよ。つーか貴族ってなに、この世界貴族いるの? そう言えばあんた達マジで人間なんだな、まって、初めて会った第一異世界人が盗賊ってどうなの」
「何言ってんだお前。ええい面倒くせえ、話はアジトに行ってからだ!!」
「えええ!?」
待て待て待て待て! 話が! 出来てない!
思わず逃げようとするが、相手は構う事なく俺の首根っこを掴んでずるずる引き摺り始める。俺はネコかとツッコミを入れる間もなく他の二人が俺の体を担ぎ、あれよあれよと言う間に幌馬車に乗せられてしまった。
「しゅっぱーつ」
「アイアイさー」
異世界でも言うんかい、アイアイサー。
……違う! だから、現実逃避をしてる場合じゃないんだって俺!
馬(仮)の嘶きを合図にガタゴトと揺れ出す幌馬車の中で、俺は必死で盗賊達に俺の素性を説明しようとした。
だけど、あまりの事態に言葉が出てこない。
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