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「いやいやいやちょっと待ってよ! 人の話聞いて!? 俺どこが貴族に見えるのねえ、お願いだからお家に返して!」
言いながら縋るも、盗賊は強面ヤクザ顔で俺をぎらりと睨み付けてくる。
「うるせえ殺されてえのか!」
「うわー! ごめんなさい勘弁してくださいー!!」
思わず頭を抱えて隅っこに蹲る俺を見て、ロクが盗賊に威嚇した。
「シャー!」
しかし効果はいまいちだ。
「うわコイツヘビ連れてるぞ! やっぱ一般人じゃねーぞ!」
「は~い興味深いので拉致けってぇ~い」
「ホアァアア!! これが噂の藪蛇って奴かー!!」
「キュッ、キュゥウウウ!」
ああもう何が何だかわからない。藪蛇って意味合ってたっけ。
頭を抱える間にも、盗賊達はいそいそと俺を縄でぐるぐる巻きにしてきやがる。畜生手際良いな、流石は盗賊だぜ。抵抗する間もなくすっかり縄で全身を巻き巻きされてしまった俺は、芋虫の如く転がされてしまった。
なんだこれ、二度目の拘束プレイかよ。初めての拘束体験が植物と男って最悪やんけ、せめて縄プレイならドSな美少女にやって欲しかった。
いやそういう場合ではないんだけれども。
それにしても、やっと危ない森を出られたと思ったらすぐに盗賊に捕まるなんて、俺ってなんて運が悪いのだろう。
自分じゃ運がいいと思ってたけど、良く考えたら運が良かったらあんな植物に出くわさないか。やっぱり運が悪いんじゃないか畜生。俺の幸運値どうなってんの誰か教えて。
色んな思いがとめどなく脳裏に浮かぶが、結局それも現実逃避でしかない。
小さく息を吐いて、俺は観念したかのように床に頭を付けた。
一体これからどうなるんだろう。
盗賊の慰み者になる……なんて展開はなさそうなので貞操に関しては安心しているが、そうなると殺される確率の方が高いか。やったぜ、男はなんて損な生き物なんだ。触手の時と言い不遇過ぎじゃね。
こうなったらいつか彼らの隙をついて逃げるしかないのだけど、俺にやれるんだろうか。
「……俺、運動音痴なんだよなあ……逃げられるのかなあ……」
ロクが一生懸命俺の縄を齧ってくれてるけど、切れるのは大分先になりそうだ。その間に、変な事が起きなければいいが。
俺はもう溜息をつく気力もなく、ただ大きく揺れる床に寝転がるしかなかった。
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