7.売り飛ばされたらサヨウナラ

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7.売り飛ばされたらサヨウナラ

 はい。こちら俺です、(つかさ)です。ただいま絶賛査定中です。  何を査定してるんだって?   はっはっは、俺自身をですよ。  俺は中古車でもないし古着でもないし読み終わった漫画でもねーんですけどね!  人間なんですけどね!!  でも値段を付けられようとしてるんだよねこれが!  奴隷にしてやろうってなことでね!  ……はあ、なんかもうここまでありがちだと溜息しか出ない。  触手盗賊奴隷って、どんだけありがちな展開なんだろう。  つーかそのどれもに遭遇していながら尽くフラグを折っちゃってる俺って、エロ漫画だったら存在抹消されてるよなコレ。  エロフラグ折っておいて逃げられもしなかったなんて、本当俺って情けない。    そう。情けなさすぎる。  丸半日あったのに、結局俺は逃げられなかったのだ。  縄が解けなかったと言うのもあるが、こればかりは仕方ない。  ロクはずっと縄を噛み切ろうと頑張ってくれてたけど、良く考えたら小さな蛇にごんぶとの縄を噛み切れというのも無茶な話だ。縄抜け出来なかった俺も悪い。  しかし俺を助けられなかったせいか、それとも縄に負けたのがよほどショックだったのか、ロクは朝からしゅんとして俺の懐に入っている。  大丈夫、お前のせいじゃないよ、ロク。非力な俺が悪いんだ。  俺が炎の脱出マジックを使えなかったのが悪いんだよ。  今の俺は江戸時代の罪人よろしく縛られてるから、慰めるために撫でてやれないのが口惜しい。  体が自由なら、ロクを撫でてやる事も逃げ出す事も出来るのに。  折角街の近くにいるのに何もできないなんて、本当悔しいよ。  馬車から見た街の景色を思い出しながら、俺は唇を噛み締めた。  
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