1.男は誰だって女の裸が好きなんだ

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1.男は誰だって女の裸が好きなんだ

        世の中はうまくいかない事ばかりで、底辺な人間には冷たい世界だ。  俺、潜祇(くぐるぎ) (つかさ)も十七歳の若い身空で底辺落ちして、今更ながらにそんな事実に悲しんでいた。    そりゃあ、俺はネットでエロ画像収集するのが大好きだし、えっちなDVDをこっそり視聴するのも心が踊る。そんな事をやってるのだから、底辺と呼ばれても仕方ないかもしれない。  でも、それは男なら誰でもやっているはずだ。底辺と笑われても、蔑まれるなんてことはないはずなのだ。  なのに、何故その趣味を俺だけバラされて、女子に嫌われにゃならんのだろう。  ……そう。  なぜ、俺一人だけが、クラスメートにそれを糾弾されなければならないのか!   「地獄だ……この世は地獄だ……」  嘆いてみるが状況は変わらない。嘆くだけで変わるんなら、男らしくなくたって何度でも嘆きたい。だけどどうしようもない。  教室でエロ画像収集癖をバラされた俺は、これからずっと女子の敵として生きていかねばならないのだ。  その事を思うと余計に悲しくなって、俺は深々と溜息を吐いた。  女子からの信頼を失った男子というのは、実際とても肩身が狭い物である。  女は恐ろしい。特に集団ともなるとその威力は桁違いだ。  噂の伝達すること風の如し、その態度の静かで冷たいこと林の如し、こっちを攻撃すること火の如く、俺の弁解を聞かざること山の如し。  つまり恐怖の風林火山。  そんな集団に体力ゼロのスケベ心だけは百人前の俺が叶うはずもない。世の中颯爽とピンチを切り抜けられる主人公なんてそうそう存在しないのだ。    と言う訳で、今日も俺は不幸だった。  女子たちの冷たい視線に突き刺され、そのせいで構ってくれる男友達も遠巻きに俺と接し、教師までもが俺が手を上げても無視をする……いやこれはありがたいが、ともかく俺は完全に味方を失い悲しい学校生活を送っていた。  ってかこんな事態になったのも悪友達のせいなんだけどな!   でも、あいつらまでこんな針のムシロに座らせる事を考えたら、責めるに責められない。  まあ、後ろめたいのか学校の外では奢ってくれたりするから、いいんだけどさ。  でも、やっぱり一人は寂しい。 「はあ……今日もサボるかな……」  一時限目が終わった所でもう気力が失せて、俺は鞄を持ってクラスを抜け出した。  
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