動き始める

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「すっげぇびっくりしたけど、来てくれてありがとう。本当にありがとう」  俺とルナを繋いでくれてありがとう。  消えそうだったルナを助けてくれてありがとう。  俺を救ってくれてありがとう。 「ま、礼を言われるにはまだ早いな」 「ですね。さっきの深海さんの言っていた心残りの事なんですけど。弟さんの事。朱雀と相談したんです」 「深海がロクでもないヤツだったら消すつもりだったって言ったろ? それを完璧にやる事にする」  ドヤ顔で俺を見る朱雀。が、俺はどういう事か解らなくてボケっとするしかない。 「消すにも色々あるだろ? 帝からは見極めて消して来い、としか言われてねぇからな。俺達としても余計な力は使いたくないからよ……ま、こっちの世界がどんな騒ぎになってもかまわねえかな、と思ってたんだがよ」  どんな騒ぎにって……それってやっぱりアレかな? 殺人とか? 不審死ってヤツ?  思わず生唾を飲み込んだ俺の肩をを安心させるように白虎が叩く。 「滅多にない事ですが、この世界に介入します。そして貴方の存在をなかった事にします」  どうですか? と白虎に問われて、考えてみる。  俺のいない世界。  最初から俺という人間が存在しない世界。 「それは誰も俺を覚えていないって事?」     
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