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こんな距離、ルナ以外とはあり得ない、と身体を離そうとするとのんびりとした朱雀の声が聞こえた。
「んだ、お前。ホントぐちゃぐちゃ色んな事考えてんだな? そういうの、折り合い付けて生きてくモンだろ? って、折り合い付かねぇから悩んでんのか……深海、一つ聞かせてくれ。和子の事抜きで。お前にこの世界は生き難いだろう?」
「……っ」
「解ってるから、言っちまえよ」
ん? と促す朱雀の目が穏やかで、こらえたい涙が溢れてくる。
「生き……づら、い……も、折り合い? なんか、つかな……何が正しい、とか、解んね、え……」
「よし、郷に来い」
朱雀の腕の中は予想外に落ち着いた。落ち着き過ぎてしばらく涙が止まらなくて、あまりに戻らない俺達を心配して様子を見に来た白虎にまで頭を撫でられて、また泣いた。
泣く俺を抱いてあやす係が白虎にいつの間にか変わった事にも気付かずに、ただ自分を包んで撫でてくれる温もりにすがって泣いていた。
自分がすがっているのが白虎だと気付いたのは、朱雀よりも少し高い声が耳元で聞こえたからだった。
「落ち着きましたか? ああ、目が真っ赤ですね」
「え、朱雀は?」
「寝てます。見てみます? 今可愛くなってますよ?」
よいしょ、と俺を立たせた白虎はそっと俺の手を引く。
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