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深海さん、とまた白虎が俺の手を引く。そしてまたキッチンへ連れて行かれた。
コーヒーメーカーの前に立った白虎が困ったように眉を下げて
「こういう時は私がお茶をお出しするべきなんですが、あの、何も解らないもので……」
と胸の前で手を合わせる。気を遣ってくれているんだと思ったら、コーヒーを淹れてくると言ったきりだった事を思い出した。
「私も貴方と二人でお話がしたいんです」
「あ、じゃあ、ルナが好きだった緑茶がまだ残ってるから、それで良い?」
「はい!」
にこりと嬉しそうに笑う白虎はやはり珍しそうに俺の手元を見ている。
二人分の水を電気ケトルに注いで、お湯が沸く間に急須の用意をした。
あっという間に沸いた湯に感心したように白虎が
「早い! 便利ですねぇ!」
と唸る。そしてすぐに
「せめてお湯くらいは注がせてください」
とケトルを俺の手から奪った。
ゆっくりゆっくりと回すように湯を注ぎ入れて、立ち上る湯気に目を細めた白虎はとても凛として高貴だった。
「少し蒸らして、いただきましょう」
急須とマグカップを持って床に座った白虎に、途端に申し訳なくなる。
「ちゃんとした湯呑みとかなくて、なんかごめん。あと座布団もない……」
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