晒した本心

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「茶器は確かに雰囲気があって目を楽しませてくれますけど、それでお茶自体の味が大きく変わってしまうワケではありませんよ? あ、そろそろ良いですかね、淹れますね」  二つのマグカップに交互にお茶を注いで、美味しそうです、と微笑む白虎につられて目を閉じて辺りを漂うお茶の香を吸い込んだ。  確かに美味しそう。俺が淹れたのより、ずっと美味そうな匂いがする。 「こぉひぃも美味しかったですけど、このお茶も美味しいですね。深海さんの作る物は皆とても美味しいです」 「そんな事……」  お世辞でも嬉しい。お義母さんとか、怖いとか思ってホントごめん。 「深海さんだけじゃないですよ」 「へ?」 「あぁ、また結論から言ってしまった……朱雀がいたらゲンコツをもらうところでした。あのね、深海さん、貴方以外にもいるんですよ? 産まれ落ちる世界を間違えてしまった魂は。人だけじゃありません、動物も」 「……そうなのか? どうなるんだ? 全員が無何有郷に行けるワケじゃないんだろ?」 「そうです。まだ昔は、郷の存在を知っている者もいましたから……本来ならこちらからは開かないはずの道が開く時があるんです。この世に心底厭気がさして違う世界を望む時に、思いの強さによって開きます。尾白もそうでした」 「尾白も……? あ、じゃあ郷の存在を知らない人はどうなる?」     
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