ひとつめの嘘

3/11
751人が本棚に入れています
本棚に追加
/317ページ
 胸が押し潰されるように重いのは何故だろう。  ルナに会えるってだけで、この世の全てをあっさり捨て去ろうとしている俺のわずかばかりの罪悪感だろうか。  更に身体が重くなって、呼吸も苦しくなってきた……え? でも、あれ? 身体が動かない。  唸ってる自分の声は聞こえるのに、身体が動かない。  これはもしや。  金縛りってヤツか? どうして? 今まで生きてきて金縛りなんてかかった事ないのに!  金縛り、金縛りは確かアレだ。身体は寝てて脳が起きてるから起きる現象で、だから……どうやって解くんだっけ? 「うぅっ!」  ズンと重くなった胸に呼吸が邪魔される。  死にたくない。今死んだらルナに会えないじゃないか! そんなのは絶対に嫌だ! 動く所は? 身体は重くてダメだ。指先、ちょっとだけ。 「不思議と目だけは開いたんです。でも絶対に開けちゃいけないって思ったのに、勝手に目が開いて……覗き込むように黒い影が……」  暇潰しに見た夏のお約束の心霊番組で、そんなセリフがあったと思う。  目か! 目なら開くかも!  目を無理矢理開けて、胸の上で蠢く黒い物体……それを寝惚けた頭が認識した瞬間に身体が動いた。 「苦しい!」 「ぅぅ……動くな、深海(みうみ)……」     
/317ページ

最初のコメントを投稿しよう!