痛い記憶

2/4
751人が本棚に入れています
本棚に追加
/317ページ
 俺のくだらない話に絶妙なタイミングで相槌を打ってくれて、勉強してる時は大人しいのに終わった途端に甘えてきて、テレビ見ながら俺が笑うと同じタイミングで尻尾を振って喜んで(いるように見える)。  ルナが人間だったら、俺、もっと寂しくないかも。  あれ? 俺、寂しいの? 「なぁ、マジ来ないのかよ? あの聖華女子大だぞ!?」  あぁ、美人でお金持ちのお嬢様が多いので有名な、ね。 「行かない……興味ない」 「お前みたいなイケメンいないと盛り上がんないじゃん……つーか、お前まだ引きずってんの?」 「……違うって」  コイツが言っているのは三年も前に別れた彼女の事だ。  クラスは違ったけど同じ高校で、卒業式にスマホの番号とメアド教えてくれて、お話ししたかったな、なんて言われて……それでダメ元で告白したらOKされて、浮かれた。  高嶺の花だったから。  その高嶺の花の笑顔が曇らないように、俺は必死で。  でも高嶺の花って、だいたい既に誰かのモノなんだよな。俺は必死過ぎて気付かなかった。  ずっと付き合ってる男がいて、俺はただの暇潰しで。そして金ヅルで。 「大事にしてね?」  初めてキスした直後にそう言われて、バカ正直に大事にした。  手を繋ぐのも許可を得てから。もちろんキスも。それ以上の事は俯かれてしまうと怖くてできなかった。  陰で嘲笑っていたんだろうと思う。     
/317ページ

最初のコメントを投稿しよう!