ひとつめの嘘

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 ……ルナ、声低くなったなぁ……って思いながら、無意識で手を伸ばして髪を撫でる。俺の大好きな柔らかい絹糸のような……絹糸のような……絹糸……あれ? 「ぅわぁ! あ! 朱雀!」  寝起きに飛び込んできた赤毛と切れ長の黒い目に心臓が止まるかと思った。慌てて髪から手を離して飛び起きた。 「うむ……和子(わこ)を片時とも忘れんとはな。さすがだ、深海」 「ごめん! ホントごめん! 寝惚けてて、だから白虎! ごめん!」 「俺にも謝れや!」  もちろん朱雀にも悪いとは思うけど、もし俺なら、ルナが寝惚けた男に頭なんて撫でられているのを見たら良い気はしない。  だからとっさに白虎に謝った。  白虎は首を傾げて、すぐに合点がいったようで笑って許してくれた。 「深海さん、気にしなくて良いですよ? おはようございます」  早くに起こしてごめんなさい、と言う白虎の言葉に時計を確認すると朝の九時だった。  寝たのが確か、もう三時過ぎてんのにって思った直後だと思うから、六時間は寝た計算になる。 「大丈夫、けっこう寝てる……あ、腹減ってんだっけ? 白虎も? ちょっと待ってて……」  ルナの朝食は着色料や保存料、香料などを一切使っていないのがウリのパン屋の食パンと目玉焼きと、果物だった。     
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