ひとつめの嘘

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 俺は朝飯は食べないからコーヒーだけ。そんな俺を心配してか遠慮してか、たまにルナがパンを千切って口元まで運んでくれたりして。あの大きな目でじぃっと俺を見つめて、食べて? ってお願いを発動するルナがとても可愛らしくて……。  でもそのパンは今はない。  ボサボサの髪や寝起きの顔を洗って身支度を整えて、パンを買いに行く事にする。  二人にはしっかり食べてもらわないと。ただでさえ苦しい世界にいて、俺の為に動いてくれているんだから少しでも何か役に立ちたい。 「すぐ戻る! 近所だから、えーっと十分で戻るから待ってて」  急げよーっと楽し気な朱雀の声に送られて、全力疾走でパン屋へ向かった。 「すごいです!」  焼いた食パンと目玉焼きとリンゴ三切れをワンプレートで出してやると、白虎は目を輝かせて、朱雀は手を叩いて喜んでくれた。  ワンプレートで出したのは皿がないからであって、決してオシャレさを求めたワケではないのだが、それでも彩りが良いと褒めてくれる。  パンも目玉焼きも焼いただけ、リンゴは切っただけ。それなのにこんなに嬉しそうな顔をされると、朝から照れ臭くてかなわない。 「お代わり、あるから。食べて」 「深海は? 食べないのか?」 「うん。朝はコーヒー。ほら、冷めるから食べて食べて!」  少し強めに促して、やっと二人は合掌して目玉焼きに手をつけてくれた。 「深海、今日の予定は?」     
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