ひとつめの嘘

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「コレは紙だろ? なんでこんなに情念がこもってるんだ? コレが世の中を回っているからか?」 「おそらく。深海さん、コレは郷には合いません……郷の住人になった深海さんがコレを持っていて平気だとも思えません……だから……ぜーんぶ! 全部こぉひぃに変えちゃいましょう。ね! お茶会です!」  くすっと笑っておどけてくれた白虎の気遣いに感謝した。  金を汚いとは思わない。生きていくのに必要だから、どんな金も汚いとは思えない。  俺も金が必要だからバイトして生きている。  ただ、たまに……金に支配されるのは嫌だと思ってしまう。  もちろん綺麗事だと解ってはいるけれど。 「おーい、深海!」 「あ、ごめん。ぼうっとしてた……あのさ! この世界の人達の事、軽蔑とかしないで欲しい! もう物々交換なんて間に合わなくて、異国とも貿易とかしてて、それで生きてる人もいて、二人からしたらこんな紙に振り回されてる俺達なんて滑稽かも知れないけど、でも!」  がすっと頭が掴まれる。朱雀さん、ちょっとだけ痛いです。 「するワケねぇだろ? 仕組みが違う。それだけだ」 「そうですよ。皆さん必死に生きている……悪い事をする人もいるんでしょうけど、悪い人ばかりじゃないでしょう? 深海さんのお友達、悪い人ですか? 違うでしょう?」     
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