汚い俺に絡む腕

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汚い俺に絡む腕

 最寄りの駅まで走って、自己最短記録で家に帰り着いた。 「ルナ!」 「にゃーっ! にゃ?」  思っていた通りに駆け寄って来たルナを、靴も脱がずにしゃがみ込んで抱き上げる。  俺より高い体温のルナの身体を抱いていると、一度思い出してしまった情けなさや惨めさが堰を切ったように溢れ出て、涙が止まらなくなった。  初めての恋人だった。両親は幼い弟を連れて海外赴任に行っていたし、俺は学校以外じゃいつも一人で、寂しかった。  彼女が笑ってくれたら、その心の中の穴が塞がるような気がしたから、バカみたいに必死で。  仕送りの生活費切り詰めて、バイト始めて、彼女が行きたいと言う所、これ可愛いなぁ、と呟く物、美味しそう! と目を輝かせる物……可能な限り叶えてあげられたと思う。俺の前じゃ彼女は笑っていたんだから、だからもう良いじゃないか、と思う。  思うのに、心の穴は以前より大きくぽっかりと空いたままだ。 「……ルナは、ルナ……は、俺を一人にしないよな? 俺を裏切ったり……しないよな?」 ふかふかのルナの毛が頬を撫でて、くすぐったいはずなのに、俺の涙が張り付いてしまってルナに申し訳ない気持ちになる。     
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