金眼の子猫

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 多分「にゃあ」か「うにゃ」を聞き間違えたんだ。これだから酔っ払いは……。  タバコに火を点けて、まんまるお月様に向かって煙を吐き出す。  子猫の目と似てる。  やっぱり酔っ払いだ、俺。  今は頭をすっぽりビニール袋に包まれて暴れている子猫に声をかけた。 「おーい。お前の名前はルナにする。大っ嫌いな風呂にも入れるし、医者で注射もさせるぞ。好き嫌いは許さない。それで文句がないなら来いよ」  どうせ通じやしないのに。  ま、猫好きはつい話しかけちゃうってヤツだ。  子猫はっていうと。 ーーバリバリガシャガシャバリバリーー  両手って言うのか? 両前脚で頭掻きむしってるよ……しかも立ち上がって。まさかビニール袋で窒息!? 助けてあげた方が良いかな? 良いよな?  あまりの激しい掻きむしりっぷりにおずおずと手を伸ばすと、頭を振り回して自力でビニール袋を外した子猫と目が合った。 「お、おう、大丈夫か?」 「にゃ!」  あれ? 会話成立? んなバカな。  自分に呆れて溜め息をついて歩き出すと後ろを子猫がついてくるではないか。 「え? お前、来るの?」  ピタッと脚を止めて大きな金色の瞳でじぃっと穴が開く程俺の顔を見つめて。 「にゃ」  と一声。  会話成立……かな。まぁ良いか。     
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