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呼びかけると、心臓がチクリと痛んだ。
「うん」
「本当に? 何で人間? いや、何で猫……?」
「えっと……」
人間ではない、と言われて俺は何故かあっさり、そうだろうなと思った。
猫でもない、と言われても納得した。猫にしては賢過ぎたしヒトっぽかった。
「猫の方が良い?」
「へ?」
「猫だと深海笑うから。このカタチになったら嫌そう……」
大き過ぎるシャツの中で居心地悪そうに身じろいだルナはまじまじと自分の掌を見つめて呟いた。
「嫌なんじゃなくて、びっくりしてる」
「そか。本当はもうちょっと猫のままでいようかと思ったんだけど、深海が裏切ったりしないよな? って言ったから、猫のままだと嘘になっちゃうから、俺、深海の事は絶対裏切りたくなくてっそんなのやだっ困るっ」
「ちょ、落ち着いて」
はっと俺を見た目にはもう涙はなかった。
「うん。あの。俺の世界は、この世界とは違ってて、理想郷とか桃源郷とか無何有郷とか楽園とか? 色々な名前で呼ばれてて存在しない物って事になってる……よね? 知ってる?」
確かめるように俺を見たので頷いて先を促した。
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