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「でもあるんだ。俺、そこ……怒られて追い出された。このカタチでこの世界にいるのはかなり負担なんだ。だからちっこい猫になってた。で、助けてって一生懸命呼んだけど、誰も助けてくれなかった。酒臭い人達に汚いって何かベタベタする水かけられたり、髪の毛逆立った人達に追いかけられたり、ゴミ投げられた。やっぱこの世界は嫌だなって思ってたら深海が俺の声聞いてくれた。ここまでは大丈夫?」
うん、と頷きかけて、止まる。
「ん? 俺が声を聞いた?」
「うん。元気でって初めて優しい事言われて、もう会えないなんて悲しくて苦しくて。いやって言ったら、深海が振り返って。んで、来て良いって言ってくれた!」
そう言うとルナは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
すごく綺麗な笑顔だった。
「あ。話ズレた……えっと、俺の世界では裏切りとかはダメなんだ。負の感情が生まれるから。けど嘘は良いんだ。嘘も方便って言うでしょ? でもね、嘘ついたら、つき通さないといけないの。嘘だったってバレた時点でそれは裏切りに変わるから……だから……俺、深海に嘘ついてた、から。裏切るなって言われたら、早くホントの事言って謝らなきゃって思って……ごめんなさい。嘘ついてごめんなさい」
指の関節が色を失くす程に握り締めた拳が膝の上で微かに震えている。
「ごめん……なさ……」
また泣き出してしまった。
俺の前に猫の姿で現れて、実は猫じゃなくて、人間でもなくて……って事がルナにとっては大罪のようだ。
はらはらと涙を流すルナを見ていると不思議と俺の目にも涙が浮かんだ。胸がひどく痛い。直接ルナの罪悪感が流れ込んでくる気がする。
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