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違う世界があるという……
人間、想定外過ぎる事が起こると驚く程冷静になるんだなと、ピタッと涙の止まった今の自分を見て思う。
玄関で抱き締めたはずのルナが消えて、代わりに俺に抱き着いている美しい少年をリビングに連れて行き、とりあえず服を着せた。
アブない子なら警察に引き渡さないと。それには全裸はヤバいだろう、俺が。
シャツを着せて、部屋着にしている肌触りの良い短パンを履かせる。彼は俺にされるがままで、素直に服を着た……泣きながら。
「えーっと、何で泣いてるのかな? どっか痛い?」
彼は俺の言葉に、胸の辺りのシャツをぎゅうっと掴む。
「ココ、痛い……深海泣いてるから、俺も涙出る……」
ぐずっと鼻をすすって俯いてしまった彼がはっきりと俺の名を呼んだ事に戸惑った。
俺はこの少年を知らないのに。
「で、キミは誰かな?」
「ルナ」
「ルナは俺の飼ってる猫だ。ルナをどこへやったの?」
「だから俺がルナ……」
「怒るよ!?」
「ひっ……!」
つい出た大声にびくりと身を竦ませた少年が涙でいっぱいの目で俺を見た。
悲しそうに少し垂れたその金眼には確かに見覚えがあった。
まさかな、とは思う。思うけど。深呼吸を一つ。
「ルナ?」
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