ルナとシャンプー

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ルナとシャンプー

「夕方には帰るから、お利口にしてろよ? 暴れんなよ?」 「にゃ」  本当に良いタイミングで鳴く。  本当に会話をしているみたいで、朝っぱらから楽しくて仕方がない。 「あーっと、飯は足りるな?」 小皿を見てルナが鳴く。 「……寂しいか?」 「にゃ! にゃ!」  しゃがみ込んだ俺の膝に額をすり寄せて甘えるルナを抱き上げた。  ふかふかの柔らかい体毛に包まれた艶やかな黒猫のルナの顔を同じ位置まで持ち上げて 「俺、嫌かも。お前置いて行くの」  なんて思わず呟いて一人赤面した。 「にー」  なんか嬉しそうな声だな、と思ったのは自惚れってヤツかな。  でもルナの尻尾はピョッコピョコ跳ねて機嫌は良さそうだ。  キラキラの目が真っ直ぐに俺を見て、抱き上げたせいか少し掠れた声で 「にゃあ」  と鳴く。 「かーわい」  小首を傾げて鳴くルナが可愛くて、つい……つい……小さくて可愛い口にキスをした。  行ってきます、と飼い猫に対する愛情表現だ。俺はもうすっかり親バカってヤツだ。  猫には雑菌が? そんな事気になりません!  だってこんなに綺麗な黒猫、見た事ない! 俺のルナがきっと世界で一番だ! 「な! お前が一番綺麗だ」 「にゃあ!」     
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