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異能。
それは神より授けられし『力』。
人の中に生まれる人ならざる者。
神に選ばれ、与えられた者。
それは二つに明確に分かれる。
『愛し子』と『忌み子』と呼ばれる存在。
『愛し子』に授けられるは『虫』
『忌み子』に授けられるは『蟲』
『虫』とは3対6本の脚を持つ昆虫の特徴を備えた者。
『蟲』とはそれ以外、脚の多い虫の特徴を備えた者。
甲虫の様な硬く頑丈な身体を持つ者は国を護る盾となり。
蜂の様な鋭い針を持つ者は他国を攻める剣となり。
蝶の様に花の蜜を食す者は慈愛を司り。
そして。
蜘蛛の様に複数の眼を持ち、糸を操る者。
蠍の様に強力な毒針を持つ者。
後者はそれこそ蛇蝎の如く忌み嫌われ、迫害された。
『そう生まれた』から。『そういう存在』だから。
そう、生まれた瞬間に運命が位置付けられた。
そして『忌み子』は幽閉される。
慈愛を司る『蝶』の元に。
『忌み子』を殺しても意味は無い。
何故なら、殺した翌日には新しい『忌み子』が何処かで生まれるから。
『忌み子』が『殺された』場合のみ、何故か直後に新しい『忌み子』が生まれるのだ。
その代わり、天寿を全うさせれば後50年は生まれてこない。
何故かはわからない。
ただ『そう決まって』いた。
だから『忌み子』は幽閉され、死ぬまでただ生かされる。
次の『忌み子』がなるべく遅く生まれてくる様に。
何の為に生まれるのか。何の為に生かされるのか。
誰にもわからない。本人達はもとより、周りの誰一人として答えなど持ちえない。
答えを知るは授けた神のみ。
だが、神が答えを教えてくれる事など無い。
これまでも。これからも。
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