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「そなた――名は何という?」
「僕? ……サクラ」
「サクラ、か……なんとまあ奇妙な偶然もあったものだ。まさか桜の季節に、人の子である『サクラ』と出逢うことになるとはな」
「僕も。お姉さんの名前は?」
「む、私のか? ……しばし待て」
私の名前……? どんな名前だったっけ……
今まで私のことを名前で呼ぶ奴などいなかったから特に気にはしなかったが……なるほど、名と言うのはこのような時に使う物なのだな。
しかし……名、か。どのような名であれば良いのだ……?
「……もしかして、名前、無いの?」
「――いや、在るぞ。ちゃんと、私には、名がある」
見栄を張って言い切ってしまった。もう後には引けないなぁ。
小童……サクラも、心なしか目に生気が宿っているようにも見えるし……ええい!
「私の名は――ハル、だ」
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