桜の妖

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「ハル……ハルさん、か……」  適当に名を言ってみたら、意外とあっさり受け入れた……?  人の子と言うのは疑うと言うことを知らないのか? 「じゃあ、ハルさん。明日も、ここに来て良いかな?」 「……好きにしろ。どうせ私はここから動けんのだ」 「ふふ、そうだったね。じゃ、また明日」  そう言って、私の“初めての話し相手”サクラは、私がくれてやった『私』の枝を持って何処かに行ってしまった。  ――ああ、中々愉快な時間だった。そうか、これが話すと言うことか。  何故今まだこのような楽しみを見つけられなかったんだろう。明日が楽しみだ。  ……いや! いやいやいや! 楽しみなわけがあるか!  私は妖だ! 人の子とは違うのだ!  ……クソ、これが“話す”と言う魔力か。人の子め、意外にえげつない手を使ってくるではないか。  しかし……楽しみなのは事実だな。  早く明日にならないモノかなぁ……。
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