桜の妖

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 先日、雨風に乗って降って来た雷。  あれに当たった桜の木があったのだ。  私の場所から離れているとはいえ、あれはきっと天から見下ろしている神様とやらが、あの桜の木に怒ってやった行いなのだろう。  いついかなる時も監視されているのはむず痒いことではあるが。  その“神様”とやらも、大変な日々を過ごしているに違いない。  いつもこうして木の枝の上でぐうたらと寝転がっている私と比べれば、それはもう働きモノなのだろう。  でも……私にも。  せめて話し相手がいれば良いのだが…… 「あのぉ――――」  そうそう、こうして話しかけてくるような者がいれば、もっと楽しいだろうなぁ。 「あのぉ……すいません」  ――一体誰に話しかけているのだ?  待ち合わせ……とは思えない。こんな何処にでもありそうな桜の木の下で待ち合わせをする人の子など、私は見たことが無い。  ではこの声は一体…… 「そこの枝で横になっている――お姉さん」  ――私のこと……だろうか?  気になったので私は身体を起こし、その声の主の顔を見る――すると。 「………………」 「………………」  バッチシ、目が合ってしまった。  ――え、この小童……私のことが見えるのか……?  いやいや、そんなわけがない。だって私は妖なんだもの。見えるわけがない。  でも今現在進行形で私と目が合っている……それは間違いない。  だったら試してやろうか。
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