桜の妖

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「――なんだ、小童。私に何か用か?」 「……用って程ではないんだけど……」  ――どうやら完全に私のことが見えているようだ。  この時代の人の子にしては珍しいな……一体何処の霊媒師の子だ? 「………………」  見たところ、ただの人の子にしか見えないな。  だが……顔の傷が気になる。  あれは何かに当たって出来た傷……だろうか。 「…………枝」 「あん?」 「折られちゃったね……」  急に話題を振って来たので、思わず変な声で返してしまった。  だがそんなこと――ただの子供が気にすることではあるまいし。至極どうでも良いことだろうに。  しかし……そうだな。せっかくの話し相手だ。精々楽しませてもらうとするか。 「確かに折られはした。だが人の子よ……別に枝の一本や二本程度、折られたところで、私の輝きは変わりはしない。他の枝に咲いている花がそれを補うからだ」 「でも……折られた時、あなたは嫌そうな顔をしていたよ?」  ――ずっと見ていたのか、コイツは……
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