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「ああ、確かに嫌だったな。でもな、小童――あれは私の許可なく、勝手に私の枝を折ったからだ。一言『ください』と言えば、私の広い心はそれを赦した……はずだ」
自分でも自信がないから断言は出来ないが、多分、きっと、恐らくは許しているはずだ。
それが、このように小さい童ならば、多分だ。
だが――そんなことでこの小童は私に話しかけてきたのか?
だったらあまりにも奇特過ぎるな。理解出来ない。
そもそも妖が見えるのならば、それだけでも忌み嫌われそうなモノなのだが――
――ああ、そうか。この小童の顔の傷は。
他者の人の子に、妖が見えるからと言われて虐めを受けているのだな。
だからここまで声が小さくて、堂々としていないのか。
なるほど、なるほど。これで分かった。
しかし……妖が見えると言っても、それを隠せばいいだけのはずではないのか? 人の子の生活は良く知らぬが……
「――小童、その枝、そなたにくれてやろう」
「え……?」
驚きの表情を浮かべたな、中々愉快な奴じゃないか。
「なに、気まぐれと言う奴だ。せっかくの枝も、愛でる者がいなければ、それはただ朽ちていくのを待つだけの運命だ。だがそなた――そなたがその枝を愛でてやれば、その枝も喜ぶだろう」
「……あなたの、枝なのに……?」
「私から切り離された枝は、もう私の身体ではない。だからそなたが持つが良い……いや、持て。これは命令だ、拒否権は無い」
ちょっとだけ意地悪をしてやった。
人の子がどうであれ、ただ花が咲いた枝など、使い道など無いだろうに。
それを無理矢理押し付けられたのだ、嫌に決まっていよう。
ニヤニヤしながら、上から見下ろしながら。
私はその小童がどのような反応をするのか、楽しむ。
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