桜の妖

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「小童、そなた――親はどうしたのだ?」  人の子は『親』と言う者が子を育てる……というのを風の噂で聞いたことがある。  であれば、それは必然的に“独りぼっち”ではないはずだ。  なのに、何故……この小童は独りなのだ? 「僕ね……お父さんとお母さん、いないんだ……」  小童は悲し気な表情を浮かべてそう言った。 「交通事故で、二人ともあっと言う間に……。僕はまだ小さいから色んな人のところでお世話になっているけど、その家の人達とはあまり、仲が良くないんだ」 「何故だ? 人の子は群れるのが好きだろう? なのに、何故そなたは群れない?」 「――見えないモノが見える、から……かな」 「妖が見える――しかし、人の子と言うのは本来“妖”が見えない。なのに、そなたは見えるから好かれない……ということか?」 「そういうことになるね。だから……」  何とも難しい話だ。  人の子と言うのは幼くとも嫌われるのか。  それは私とは全く違う悩みだな。私には解決策の一つも浮かびはしない。  だが……そうだな。  せめてその愚痴くらいは聞いてやろう。
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