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がたごとと馬車が揺れて、道をすすんでいく。
道と言っても砂利と土がむきだしのあぜ道だ。石畳で舗装された道路など、
もっと都の方にいかなければありはしない。
アサガたちが住むこの村は、昔は鉱山でにぎわいもした農村だ。
だが彼がおさないころに崩落し、いまでは人もだいぶ少なくなっている。
人がいなくなった理由は、他にもあるのだが……
「――わりぃなぁ、アサガ。賃金は、修理がおわってからじゃないと払えなくてな」
「ああ、わかってますよアッカーソンさん。そっちこそ、水車が動かないと
仕事にならないでしょう」
「はは、まあまるきり動かねぇわけじゃないんだ。だましだましやるさ」
このあたりの畑で採れた麦を水車ですりつぶし、小麦にして町に卸すことで
生計をたてているアッカーソンは、村では唯一馬車をもっている。
必然、村人が移動するときは今のアサガのように彼に頼むことが多い。
――村人だけとは、限らないが。
視界の端にみえてきたものに、ちらりと目線をくれる。
道のわき、草むらの一部が不自然にえぐれたその中心に、黒い塊。
一抱えほどもある、大きな弾丸だ。
「――もう、四年も立つかあ。
あんな煤けて錆びた砲弾じゃ、鉄クズとして売れもしねぇ。
帝国の奴ら、自分たちのもんはちゃんと持ち帰れってんだ」
「……」
アサガの視線に気づいたのか、アッカーソンが毒づく。
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