第一章:「時間の神」

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がたごとと馬車が揺れて、道をすすんでいく。 道と言っても砂利と土がむきだしのあぜ道だ。石畳で舗装された道路など、 もっと都の方にいかなければありはしない。 アサガたちが住むこの村は、昔は鉱山でにぎわいもした農村だ。 だが彼がおさないころに崩落し、いまでは人もだいぶ少なくなっている。 人がいなくなった理由は、他にもあるのだが…… 「――わりぃなぁ、アサガ。賃金は、修理がおわってからじゃないと払えなくてな」 「ああ、わかってますよアッカーソンさん。そっちこそ、水車が動かないと  仕事にならないでしょう」 「はは、まあまるきり動かねぇわけじゃないんだ。だましだましやるさ」 このあたりの畑で採れた麦を水車ですりつぶし、小麦にして町に卸すことで 生計をたてているアッカーソンは、村では唯一馬車をもっている。 必然、村人が移動するときは今のアサガのように彼に頼むことが多い。 ――村人だけとは、限らないが。 視界の端にみえてきたものに、ちらりと目線をくれる。 道のわき、草むらの一部が不自然にえぐれたその中心に、黒い塊。 一抱えほどもある、大きな弾丸だ。 「――もう、四年も立つかあ。  あんな煤けて錆びた砲弾じゃ、鉄クズとして売れもしねぇ。  帝国の奴ら、自分たちのもんはちゃんと持ち帰れってんだ」 「……」 アサガの視線に気づいたのか、アッカーソンが毒づく。
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