第一章:「時間の神」

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思い出したように恐怖がわきあがり、足から力が抜けて崩れ落ちる。 アサガの手足は砂ほこりにまみれて真っ黒になったというのに、 この鉄人形は不思議と汚れ一つついていない。 「に……」 (にげ、なきゃ……) わけもわからず、その場をはなれようとするのに手足が動かない。 いまや持ち上がりきった額はまるで大口を開けた獣のようでもあり、 その内側は闇に包まれてなにも見えない。 ――と。 その暗闇の中から――ほそい指が伸びてきた。 10歳になったばかりの少年とおなじくらい、華奢な指。 その指は開いた穴のふちをそっとつかみ、なにかが闇のなかから するりと浮かび上がってくる。 「あ……?」
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