第一章:「時間の神」

4/56
前へ
/59ページ
次へ
急にわきあがった恐怖が、急にふきとんだ。 アサガは岩が落ちる轟音も、自分の心音さえ耳に入らなくなった。 それほどまでに――現れた存在に、目を奪われたのだ。 陶磁のように白く透けた、美しい肌。 蒼い瞳は深い海のように輝き、のびた髪は光をまき散らすように白くたなびく。 鉄人形の中からあらわれたのは――彫像のように美しい、少女だった。 するり、と少女の視線が自分の視線とまじわったのを、アサガは感じた気がした。 これまで少年が見てきたどんなものよりも美しい彼女は、一文字に結ばれた唇を 開いて―― ・・・
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加