1人が本棚に入れています
本棚に追加
「お、来たか。彼らは三年の、通称ヒムロ兄弟だ。実際は他人どうしだが、いつもつるんでるから皆からヒムロ兄弟と呼ばれてる。眼鏡をかけている方が氷室京矢、赤髪の方が火室仁志だ」
「何で京矢の方を先に紹介すんだよ、紫苑」
「いちいち騒ぎ立てるな。そんなだから二番手なんだろ」
そう言って京矢がため息をつく。
「何だと?」
京矢の態度に激昂した仁志が京矢につかみかかる。
京矢はそれを逆にねじふせて、仁志を床にたたきつける。
仁志は、うっと鈍くうめき声をあげて床に伸び、京矢は何事もなかったかのように襟をただす。
その様子を微笑ましげに見守っていた紫苑が状況を説明する。
「京矢は柔道黒帯だからね。中学では全国までいったしね」
「え、この体格でですか?」
私は思わず疑問の声をあげた。
その驚く顔をおかしげにみやりながら、紫苑はその問いに答えた。
「細身だけど、無駄のない筋肉をしてる。触ってみるとわかるよ。京矢、触らしてやれ」
「はあ?」
京矢がそう言って顔をしかめる。
「何だ、体に自信がないのか?」
紫苑がからかうように言う。
「まさか。さっさと触れ」
「え?いや、え?」
京矢のまさかの発言に、私はあわてふためき、だれかに助けを求めるべくあたりを見渡す。
しかし、部長の紫苑はもちろん、身をおこしにかかっていた仁志も、自分の世界にひたっている要も、だれ一人止めに入ってはくれなかった。
最初のコメントを投稿しよう!