ざぶとん王子

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「お、来たか。彼らは三年の、通称ヒムロ兄弟だ。実際は他人どうしだが、いつもつるんでるから皆からヒムロ兄弟と呼ばれてる。眼鏡をかけている方が氷室京矢、赤髪の方が火室仁志だ」 「何で京矢の方を先に紹介すんだよ、紫苑」 「いちいち騒ぎ立てるな。そんなだから二番手なんだろ」 そう言って京矢がため息をつく。 「何だと?」 京矢の態度に激昂した仁志が京矢につかみかかる。 京矢はそれを逆にねじふせて、仁志を床にたたきつける。 仁志は、うっと鈍くうめき声をあげて床に伸び、京矢は何事もなかったかのように襟をただす。 その様子を微笑ましげに見守っていた紫苑が状況を説明する。 「京矢は柔道黒帯だからね。中学では全国までいったしね」 「え、この体格でですか?」 私は思わず疑問の声をあげた。 その驚く顔をおかしげにみやりながら、紫苑はその問いに答えた。 「細身だけど、無駄のない筋肉をしてる。触ってみるとわかるよ。京矢、触らしてやれ」 「はあ?」 京矢がそう言って顔をしかめる。 「何だ、体に自信がないのか?」 紫苑がからかうように言う。 「まさか。さっさと触れ」 「え?いや、え?」 京矢のまさかの発言に、私はあわてふためき、だれかに助けを求めるべくあたりを見渡す。 しかし、部長の紫苑はもちろん、身をおこしにかかっていた仁志も、自分の世界にひたっている要も、だれ一人止めに入ってはくれなかった。
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