名前が呼べない君

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名前が呼べない君

 俺は知ってる。  同じクラスの同級生、高遠夕ちゃん。高校一年の頃から今現在、高校二年まで同じクラスの女の子。何度か喋った事はある……いや結構喋っているけれど、彼女は一度たりとも俺の名前を呼んだ事はなかった。――そう、俺は知っているのだ。  彼女は俺に好意があるゆえに俺の名前を呼ぶ事が出来ない、と。  俺と彼女が知り合ったのは高校一年の時の委員会。夕ちゃんは環境委員会に立候補。俺は環境委員会の、もう一つの空いていた枠へのあみだくじによる決定。最悪だ。ついてない。  友達に「遼?頑張れよ?」なんて嫌味ったらしく笑われながら言われては腹がたつし、余計にやる気がなくなる。仕方なしなし今日の環境委員の仕事である、中庭の花壇への水やりをしに行った。  ガラリとドアを開けて、外履きを地面に軽く投げる。ため息をつきながら靴を履いて、水くみ場へ向かう。ジョウロにじゃぼじゃぼと水を入れながら欠伸を一つ。やる気のなさが全面に出ている事であろう。水がそれなりに入ったところで蛇口を閉め、ジョウロを持って花壇に向かう。  向かった先には女生徒の後ろ姿があって。もう一人の子がもう来ているんだ、早いな。とぼんやり思った。     
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