名前が呼べない君

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 隣に立ってジョウロの水を撒き始める。それまで俺に気づかなかったのだろう、その女生徒は俺の存在に気づいた瞬間体を揺らした。きっと驚いたのだ。委員会の仕事は面倒だったが、人と話したりするのが嫌ではない俺はその女生徒に話しかけた。 「俺、相楽遼。君は?」  女生徒はちょっとびくびくしながら俺を見てきた。自分で言うのもなんだが俺は見た目が若干チャラい。と言うか軽薄そうに見えるそうだ。友人曰く、だが。そんな俺が怖かったのか、目をあちこちにやりながらしどろもどろに答える彼女。 「あっ、えっと……高遠夕、です」  一瞬だけ目があった。それだけなのに俺の心臓は強く主張をした。 「高遠さんかあ。俺、同じ委員会なんだよね。よろしくね」  なんだこの子、すごい可愛い。  それが俺の感想だった。何が、とか、どこが、とか聞かれると困るが、可愛い。とにかく可愛い。  俺は話題を広げるべく、ジョウロの水を適当に撒きながら口を開いた。 「この委員会の仕事、疲れるよね。めんどくさいって言うか……」 「私、自分でこの委員会選んだんで……それにお花、好きだから」 「そうなんだ?」  会話を続けているが気が気じゃない。動悸がする。これが一目惚れってやつなのか。  それからは他愛のない話をして委員会の仕事を終えてそれぞれ帰路についた。俺の心臓は家についてもバクバクしていて、想いをぶちまけるように大声を出したら親に怒られた。     
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