名前が呼べない君

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 それから俺は積極的に声をかけ続けた。ギリギリだった登校はやめて、夕ちゃんが来る頃には学校に着いていた。そして毎朝必ず挨拶をする。友人たちからは「遼が真面目になった……」なんて言われたが夕ちゃんと仲良くなるためだ。ところで夕ちゃん、とは俺が心の中で勝手に呼んでいるだけだ。いろんな面で夕ちゃんと接触を図った。それを半年続けた。――そして俺は気づいてしまった。  俺、夕ちゃんに名前すら呼んでもらえてなくない?  気づいた時はめっちゃショックだった。もしかして嫌われてる? チャラい男はダメだって? そう思って本物の真面目な生徒になってやろうか、とも考えた。何もまだ夕ちゃんがチャラい男がダメだなんて言ったわけでもないのに。  しかし、こちらにも気づいてしまった。  俺は夕ちゃんにそれでもめげずにアピールしまくった。ダメかなあ、なんて悲しさを抱きつつ。ある日、夕ちゃんが落し物をした。それを俺がたまたま拾って夕ちゃんに手渡した。その時、俺の手と夕ちゃんの手が少し、触れた。夕ちゃんがびくっとしたのがわかって、また怖がらせてしまったのかと思い、顔を覗き込んだ。――そこには顔を真っ赤にした夕ちゃんがいた。 「あ、えっと、あ、ありがとう……! じゃ、じゃあ!」  そのまま夕ちゃんは早歩きで去って行った。俺はそこまで鈍感じゃない。あれ、もしかして。 「俺、意識されてる……?」     
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