名前が呼べない君

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「……お母さんの、形見のお守りを、なくしてしまって……」  形見。それは夕ちゃんのお母さんが亡くなっていると言う事。それだけでとても大事なものだとわかった。 「いつまであったの?」 「お昼休み前には……お昼休みに、中庭の花壇のお花を見にきたからここで間違いないと思うんだけど……」 「そっか」  俺は腕まくりをして男にしてはちょっと長い髪をヘアゴムで結う。そして地面に膝をついた。 「え、あの……!?」 「俺も手伝う」  そう言えば夕ちゃんはぎょっとして「いいよ……!」と言ってきた。 「俺がやりたいだけだから。それに泣きそうな高遠さんそのままに出来ないし」  夕ちゃんは目に涙を溜めながら「ありがとう……!」と言ってきた。夕ちゃんの為になんとしてでも見つけてやる。  二人であちこち探しているうちに夕ちゃんは余裕が出来てきたのか、クラスメイトの話や先生の話なんかをし始めた。俺も夕ちゃんも笑って、それでも探す手は休めない。  そんな時、ふと聞いてみたくなった。 「高遠さんさ」 「うん?」 「なんで、俺の名前呼んでくれないの?」  ピシリ。まさにそんな音がしたような気がした。夕ちゃんはかたまってしまった。 「俺、高遠さんに嫌われてるのかなー……なんて」     
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