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夕ちゃんが俺の名前を呼ばない理由は知ってる。ただ、夕ちゃんがなんて答えるかが知りたかった。意地が悪い男だと自分でも思う。それにあわよくば名前呼んでもらえないかなー、なんて。
「まあ、今はお守り探そうか!」
夕ちゃんをこれ以上困らせても、と思いお守りを探す。水くみ場の横にあるジョウロ置き場の間に何かあるのが見えた。それは――
「あ! これじゃない!?」
ピンク色の可愛いお守り。夕ちゃんに見せればまた泣きそうな顔をして首を縦に振った。
「あ?よかった! 俺もほっとしたよ?」
「あ、あの……ありがとう!えっと……その……」
「うん? どうしたの?」
夕ちゃんは意を決した顔をして俺の目を真っ直ぐ見る。
「ありがとう!相楽くん!」
俺は思わずポカンとした。夕ちゃんが俺の名前を呼んでくれた。
夕ちゃんはそのまま言葉を続けた。
「べ、別に嫌いとかじゃなくて、そ、その……逆、と言うか……!えっと、その……相楽くんのことが好きすぎて……!」
夕ちゃんはそこまで言ってハッとした表情を浮かべる。それからみるみるうちに赤くなっていく。そして俯いてしまう。
「やぁっと名前呼んでくれた」
自分でも疑うくらい優しく甘い声が出た。それだけ嬉しかったのだ、しょうがない。夕ちゃんは顔が真っ赤なまま下に向けていた顔を上げた。俺はそれも嬉しくて顔が緩んでいくのがわかる。
「それに、知ってた」
「え?」
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