名前が呼べない君

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「高遠さん、俺のこと好きで名前呼べないんだなぁって、可愛いなーって」 「え!?」  顔が真っ赤なまま口をパクパクさせて、金魚みたいだなあ、なんて。 「な、な、な……!だってさ、さ、相楽、くん、嫌われてるのかな、って……!」 「あは、名前呼んでくれるかな? って言ってみただけ」 「え、えー! 私、誤解を解かなきゃ、って必死に名前呼んだのに!」  ああ、全くもう。可愛いなあ。 「うんうん。俺、嬉しかったよ」 「いやそうじゃなくて……!」  顔を扇ぐ夕ちゃん。本当にすごく恥ずかしがり屋のようだ。……俺もちゃんと言わなきゃ。 「名前を呼んでもらえなくて、さみしかったのはあるよ? だって、俺も高遠さんのこと好きだし」 「はい?」  よし、今日は俺も嬉しいことがあって胸がいっぱいだし、これ以上は夕ちゃんもキャパシティオーバーだろう。よっこらせ、と投げ出していたカバンを持って立ち上がる。 「じゃあね! 高遠さん! 今度から名前じゃないと反応しないから!」 「え、ちょっと待って、ねえ、待っ――相楽くん!」  名前を呼ばれる。なんでこんなに嬉しいのか。俺は振り返って夕ちゃんを真っ直ぐ見る。     
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