+第1話+「君のファンになった」

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 調布から三つ目の駅に着いたものの、肝心のバスが三十分に一本だった。ひまでしょうがないので絵を描いて時間をつぶそうと思い、下書きをしていたら思いきり集中してしまって三十分をとうに過ぎてしまった。また三十分後だ、と反省して少し時計を気にしながら丁寧に色を塗り始めた。色鉛筆とクレヨンで色を足すうちに、本気で仕上げたいと気合が入り始めて、結局完成させてしまった。  はたと気づくと、周りに年配の方々が集まって「絵描きさんだよ」「若いのにすごいねえ」とにこにこ話しかけてきたので、涼は適当に笑ってそそくさと逃げた。  ちょうど時間だったらしく、小さな明るい緑色のバスが到着していたのでそこに飛び乗る。  運賃を払ってほっと一息つく。座席はまたお年寄りで埋まっていたので吊革につかまった。小型の市民バスは見かけに似合わず豪快に道を走り、車内はがたがた揺れた。『武蔵野台地』と呼ばれる坂道の多さに少し酔いそうになったところで、栗名の住む団地にたどり着いた。  降りると、もう夕方近かった。  結局一時間半近くかかってしまった。     
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