デキデキ、キザキヘキメ

1/36
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ

デキデキ、キザキヘキメ

 本物って奴は、ファインダーの中でぱっと輝いて見えるものさ。ジェームズ・マレーなんぞまさしくそうだった。キング・ヴィターが彼を連れてきたとき、誰もが「こんな冴えない男」と笑ったが、俺は分かってた。彼の秘めた魅力ってものがな。  ミスター・ルーウィンの自慢話は、酔うたびに繰り返されるーーアルコールではなく、自分にという意味だから、頻度は高い。   つまり、ジャックが反論したくなるのを懸命に堪えなければならない機会も多いと言うことだ。「へえ、そうですか。だけど、彼は『群衆』位にしか出演してないじゃありませんか」  確かにあの映画は傑作なのかも知れないが、マレーが輝いたのはそれっきり。あとは箸にも棒にも掛からないメロドラマに幾つか出て、近頃はサンセット大通りを酒瓶抱えてうろうろしてるという話だ。     
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!