野ざらしの、

2/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
当然の事ながらあたりに人はいない。 夕方頃、突然連絡をしてきて、「夜桜を見に行こう」と誘ってきたのは彼だった。 地元を離れていたはずの彼は、数日前にこっちに戻ってきていたらしく、また離れる前にここの夜桜を見たかったのだが、突然の誘いで何人かに断られた末に、僕に連絡を取ってきたらしかった。 結構仲が良かったと思っていたから、帰ってきている報告が僕のとこまで来てなかったことや、なんだか消去法のように花見の相手に選ばれたことに、ほんのりショックを受けながらも、なんの予定もなかった僕はそれを了承し、今に至る。 「それにしても、この公園の桜って、こんな綺麗だったんだな。」 彼が指定した公園は、僕の家から少し遠かったけれど、よく近くを通る公園ではあった。ただ、桜が綺麗な印象はなかったから、改めて見てみると結構綺麗な桜に感動する。 ここは、穴場スポットなのかもしれない。 「死体が埋まってる桜は綺麗なんだよ」 彼はまた少し笑いながらその話を蒸し返した。 「もーやめろよーその話。」 精一杯嫌そうな顔をしてみるも、彼は楽しそうに話を続ける。こっちの顔なんか見ちゃいない。 「昨日の夜も、ここ通ったんだよ。」 「まって、怖い話始める気じゃないだろうな?」     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!