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当然の事ながらあたりに人はいない。
夕方頃、突然連絡をしてきて、「夜桜を見に行こう」と誘ってきたのは彼だった。
地元を離れていたはずの彼は、数日前にこっちに戻ってきていたらしく、また離れる前にここの夜桜を見たかったのだが、突然の誘いで何人かに断られた末に、僕に連絡を取ってきたらしかった。
結構仲が良かったと思っていたから、帰ってきている報告が僕のとこまで来てなかったことや、なんだか消去法のように花見の相手に選ばれたことに、ほんのりショックを受けながらも、なんの予定もなかった僕はそれを了承し、今に至る。
「それにしても、この公園の桜って、こんな綺麗だったんだな。」
彼が指定した公園は、僕の家から少し遠かったけれど、よく近くを通る公園ではあった。ただ、桜が綺麗な印象はなかったから、改めて見てみると結構綺麗な桜に感動する。
ここは、穴場スポットなのかもしれない。
「死体が埋まってる桜は綺麗なんだよ」
彼はまた少し笑いながらその話を蒸し返した。
「もーやめろよーその話。」
精一杯嫌そうな顔をしてみるも、彼は楽しそうに話を続ける。こっちの顔なんか見ちゃいない。
「昨日の夜も、ここ通ったんだよ。」
「まって、怖い話始める気じゃないだろうな?」
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